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13の理由 シーズン2 報復の矛先/シーズン3 予想 考察 レビュー

 

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ネタバレしています。

 

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『桐島部活やめるってよ』を見たときも、やっぱり高校生って大人より複雑だ、と考えた。

13の理由を見終えて思ったのは、やっぱり高校生って大人より複雑だ。

 

桐島部活では高校というコミュニティの中で、ヒエラルキー同調圧力、存在価値、心の裏側に抱えた葛藤がぶつかり合う映画だった。

 

対して13の理由は、今起きている問題に翻弄される彼らが、怒り、憎しみ、悲しみ、といった感情の矛先を見誤った挙句、それらは連鎖し、また次の深刻な問題を生む、かなり深刻な内容だ。

 

蓄積された問題に耐えることが出来ず、ハンナは自殺し、アレックスも自殺未遂、クレイも頭に銃を向けた。ジャスティンはドラッグに溺れ、タイラーは銃乱射事件を起こそうとした。

 

それでも、どうしたって、変わらない。

裁判が終わり、ハンナの死を偲んでも、学校は変わらない。

シーズン2でメインプロットとして学校への賠償を求め、それが認められないのも、そういうことだ。それが事実。

また日常に戻ろうとする学校の中でタイラーの身に起きることは、本当に重い。ハンナの悲劇は繰り返される。

そしてタイラーが『こうするしかない』と、みんなを、学校を、社会を変えようとした行動は、あまりにも残酷だ。

アメリカの銃乱射事件は日本でもニュースになるが、加害者にどんな葛藤があったかまでは知り得ない。

 

未成年の性犯罪、暴力、銃問題、自殺は、“動機と結果”だけでは、その重大な本質を理解するには足らない。

『真実にはいろいろな側面がある』とは劇中で何度も語られてきたが、ハンナの自殺をキッカケに描かれる様々な問題・トラブルの複雑な因果関係は、やはり周りの大人にはどうにも出来ないことがほとんどだと思い知らされる。

校長のいつになっても変わらない薄情な態度は、ある意味、本質かもしれない。運営側がどう変わろうと、高校生は高校生で、どんなルールの元にも同じ問題が起こりうる。

だから、悲劇を起こさない為には、本人が自分自身を変えていくしか無いってことだ。

皮肉なのが、それに気づくには、大人になるしかないということ。

同じぐらいの子を持つ親が見たらかなりキツイ内容だと思うが、高校生なら誰しも、親が想像する以上に隠し事をしているし、トラブルを抱えている。

大人としてどう導くべきか、登場する大人たちの後悔する姿を通して伝わる。

気づくべきだった、聞くべきだった、止めるべだった、話すべきだった。

 

ただただ難しい、考えうるほぼ全ての問題が盛り込まれている。日常的なレイプや暴力がここまで酷くなくても、多感で大人でも子供でもない高校生なら、誰でも極端な感情を持ちやすい。

自分が高校生に戻ったとして、その時にもしこのドラマがあっても、あの時の自分がした間違った選択を変えられる自信は無い。むしろ、衝動的、情緒的、突発的な行動に拍車がかかるかもしれない。翻弄される彼らの姿がリアルで、触発されるだろう。このドラマは17歳以下には不適切とされているのが、大人は、子供に見せないべき、まずそこからだと思った。

 

 

 

ところで、シーズン2のハンナについてだ。

あれはいったい?クレンが想像に見るハンナなのか?幽霊なのか?

幻覚や想像だと思っていたが、会話をし始めるから少し混乱した。クレンの自問自答をハンナ姿を借りて見せている、と解釈して見ていたが、どうしても違和感があった。

どんな設定にせよ、この奇妙な仕掛けは、あまり機能していない。本当は話せないハンナと話すことで、クレンの切ないハンナへの気持ちは伝わるのだが、プロットとしては必要ない。

 

とはいえ、ああ、このシーンがあったから、これでよかったのかと思う所もあった。

シーズン2最終話でハンナとクレンがベンチで話すシーンがある。

クレンは“忘れるのが怖い、でも忘れられないのも怖い”と話す。すると、ハンナは

『ダンスパーティー覚えてる?人目も気にせず、ただ踊り弾けた夜』と問いかける。

クレンは微笑みながら

『ああ覚えてるよ...なんで?』

と聞き返すと、ハンナは

『なんでもない、ただ思い出して欲しくて』

と答える。

 

これが泣けた。あまりにも切ない。死んだ人が、生きている人に語りかける言葉としては、あまりにも切ない。『楽しかったことを思い出して』を最も芸術的に表現するなら、この会話だと思った。というか、実態の無いハンナは、この会話とハンナが教会のドアを出て行くシーンを撮りたいが為に挿入したのかと思うほどグッと来た。なので全否定するわけでも無い。

 

もうひとつ、点と点を線で結ぶには少し強引にも感じた。一気に全話配信というスタイルだから、テレビドラマ特有の何ヶ月スパンで鑑賞するために必要な脚本構成は考慮されてないかもしれないが、それぞれの因果関係が何話もすっ飛ばされて急に展開し始める、といったプロット状の混乱も感じる。

 

シーズン3が決定しているそうで、シーズン1のテープからシーズン2は証言に置き換えられ、どちらもハンナの様々な側面と事実が明らかになっていった。シーズン2で明かされたハンナと周りとの事実が多すぎて、シーズン1の衝撃は割と薄れている。ブライスからのレイプ被害もハンナだけでなくたくさんいた。そしてハンナの自殺についてもある程度落ち着いている。

今後はクロエやタイラー、トニー、あとはその後の言及が無いマーカス。この辺が中心になりそうだが、ブライスは遅かれ早かれ、自分のした酷い行いが、必ず自分に返ってくるだろう。

転校するというのがキーワードだ。

ブライスはどんな葛藤に苦しみ、どんな選択をするか。必ず報復され、自分の身に起きる事で理解するはずだ。