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ブラッド・スローン レビュー・考察・批評・ネタバレ

 

ゲーム・オブ・スローンズ』のニコライ・コスター・ワルドー、『ウォーキング・デッド』のジョン・バーサル、『バーン・ノーティス』のジェフリー・ドノヴァンが一同に会し、海外ドラマキャラクターの強いイメージからいち早く抜け出せ合戦みたいな形になっている『ブラッド・スローン』。

 

ジョン・バーサルは『ベイビー・ドライバー』や『ザ・パニッシャー』もそうだけど本当にヒゲとタトゥーと柄の悪い役が似合う。主役のニコライのギャングルックもいかつい。ジェフリー・ドノヴァンはいかにも元締めっぽい風貌でナイスである。

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さて本作はエリート金融マンが飲酒運転死亡事故を起こし刑務所に収監、ギャングの世界でどう生き延びるかという話で、それ自体は単純な話であるものの、とにかく刑務所のリアリティが凄まじく、受刑者と看守関係性や人種間グループ、外と中との繋がりなど刑務所社会がわかりやすく描かれている。

そのほとんどがギャングで、中に入ればおもちゃにされ死ぬか、サバイバルするかしかない。そんな場所でエリート金融マン、ジェイコブのウォール街で活躍した脳みそがどう再利用されるかが面白い。舐められたら終わりってことでちょっとした小競り合いでいきなり黒人をぶん殴りホワイトパワーギャングの仲間入りとなるわけで、ここでやっていくには殺しも厭わず受けるしか無い。特別こういった体質の刑務所なのか、アメリカの多くの刑務所がそうなのかは知らないけど、刑務所がいかに一般市民を犯罪者に変える生産ラインかを示していて、日本の更生を目的としたそれとはだいぶ文化が違う。主人公の彼が飲酒運転で投獄された一般人だったということが根本的な部分でアメリカの刑務所制度の問題を強く強調していた。

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家族だけはという願いと原動力を持ちながらも犯罪者のボスに変わっていく様は『ブレイキング・バッド』のウォルター・ホワイトを思い起こさせ、同じように一般人に眠る潜在的なエネルギーを表現している。

ジェイコブはあまりにも不遇だったが、一度足を突っ込めば外に出ても犯罪から抜け出せない。「ここから出れば縁が切れると思ったか?外に出ても俺たちはブラザーなんだよ」というセリフがずっしりと重かった。

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