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M990V6のリークとnew balanceと新たな幕開け

TEDDYのM990V6のリーク

 

13代目となるM990V5も来年で3年を迎える。2016年のV4発売から3年後の2019年にV5が発売されたタイミングを見ると、来年2022年にM990がアップデートされてもおかしく無い。ファンはこのリークに特に驚くことはないと思うが、“M990”というプロダクトがnew balanceのフラッグシップの付加価値としてもたらした恩恵は大きく、待ち望んでいたのも事実だろう。

new balanceで、最も(恐らく1000番台よりも)重要なアーカイブだ。

 

 

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これはインスタなどを中心に出回るM990V6のリークとされる画像だ。

さて、出どころはどこか?

 

MADE IN USA クリエイティブディレクター

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真ん中テディ・サンティス(Teddy Santis),他 USAクラフトマン


この画像をアップしたのはテディ・サンティス(Teddy Santis)というデザイナーだ。彼は「エメ・レオン・ドレ(AIME LEON DORE,ALD)」というニューヨーク発のブランド創始者である。2021年4月頃、new balanceはテディと長期間のパートナーシップを契約しており、MADE IN USAコレクションのクリエイティブ・ディレクターとして商品開発に携わるという。そしてnew balanceは2022年よりテディの手がけるコレクションを全世界発売すると発表している。

最近、ALDはnew balanceとのコラボレーションとしてP550をリリースしている。NIKEのコート系アーカイブと比較すれば、バックグラウンドの乏しいモデルだが大ヒットを飛ばす。

1989年に発売したNB550は長らく冬眠状態だった。テディはアーカイブをくまなく調べ、目をつけた550を “伝統的カラー” で “歴史ある” スタイルで再構築する。黄色いミッドソールにヒビ割れた革のNロゴ。それをヴィンテージと呼ぶべきか、「着用された」かのような佇まいは、手をつけられてこなかった記憶を呼び起こし、市井が忘れかけていたスニーカー史の線を繋ぐnew balanceのスタイルである。一方で、NIKEに見られるような誇大プロモーションと意図的に操作される供給にハイプライス化したスニーカー市場は、投資の対象ともされ、高いもの、無い物を持っている優越感で消費される。果たしてそれは本当に健全か。

 

 

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new balanceはクリエイティブ・ディレクターという役職を設けるのは創業以来初である。それほど、テディが550の再構築でもたらした恩恵はnew balanceにとって大きなものだった。MADE IN USAプロダクトの躍進と、new balanceとテディによるタッグはスニーカー史の時代の流れを変えるクリエイティビティになり得るはずだ。

数年続いたNIKE一強には、二次流通がもたらす付加価値が、ブランディング的手法の一部とされながら盲目的な消費行動によって金が回り続ける。

本当に欲しいと思えるものは何か。

 

NIKE DUNKの終わり-hype around

人の人生は大きなサイクルである。その中には年や季節があり、繰り返しながら、ある時は衰退し、ある時は躍進する。そしてそれはスニーカーも同じである。我々はそれを何度も見てきたはずだ。

例えば本当にダンクが好きな人だったのか?と問われると、そうではなかった層も存在する。

徹底された誇大プロモーションと供給管理は、何を履いていいかわからない人たちへの転売を促し、手に入らないもの=良いモノという構図が出来上がる。それがブランディングかと問われれば否定的な意見を持つブランドが大多数であるはずが、ビジネス的手法として象徴的なのがNIKEのDUNK、AJ1、MAX95などである。

しかし、現在はダンクの市場価値は下がる一方だ。アーティストやハイブランドとのプロモーション(hype around)が落ち着くと、過去そうだったように、終わりを迎える。既に“ピーク”は背後に待ち構えている。DUNKを扱えなかったアカウントにDUNKが並ぶ日もそう遠く無い。

 

テディが何を担当するか?

550がアーカイブの再構築であり、テディは現にクリエイティブ・ディレクターに就任したということ。そこにはhype aroundとは明らかに違う血脈を持っている。

一種の麻薬的な熱狂に終始せず、スタイルと機能とバックグランドに価値を生み出す、そんな価値観を550に感じずにはいられなかったことに、今後のnew balanceのMADE IN USAプロダクトは、テディの手を借りより多角的にスニーカー史をリードするに違いないはずだ。