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なんとなくNIKE FREE RUN2が日本で復活している。解説・考察

あれから10年,NIKE FREE RUN 2

■2011年4月1日に発売されたNIKE FREE RUN +2。FREEソールの歴史は1985年に発売された「ナイキ ソックレーサー」まで遡る。柔らかいソールに靴下のようなアッパー、それまでの既成概念を覆す革命的一足。85年と言えばnew balanceで言うM1300のリリース年だと考えると、ソックレーサーが21世紀の今でも新しいデザインと見えるのは革命的だったと言える。その後、1995年「エアリフト」2000年「エアプレスト」2011年「フリーラン+2」と続く。

■2009年から2012年頃まで日本のスニーカー市場ではダイエットシューズ(シェイプアップシューズ)の人気がピークだった。東日本大震災前までは、女性向けのスニーカー市場は開拓前で、女性がスニーカーを履く時は理由が必要だった。そんな中でREEBOKのEASY TONEやスケッチャーズのシェイプアップスは“履くだけで痩せる”というプロモーションで、空前のヒットとなる。しかし、REEBOKの誇大広告による訴訟などが象徴的な出来事として、一気に世間からは飽きられ目が覚める。

そういったブームの裏側で徐々に盛り上がりを見せ始めたのが『ベアフットランニング』である。NIKEが言うのは“アフリカ人はなぜ足が速いのか?裸足で走っているからだ。”というキャッチコピー。ランニングシューズは薄くて、爪先と踵の高低差がフラットであれば、靴の性能に頼らず効率が良いトレーニングが可能となるという理論だ。まるでダイエットシューズに対するアンチテーゼ的でもあるコンセプトは一気に爆発的なスピードで市場を拡大する。最もアイコン的存在だったのが2011年に発売した「NIKE FREE RUN2」だ。



■とはいえ、FREE RUNはランナーだけでなくライフスタイルとしても受け入れられていて、デザインの秀逸さや、その柔らかさは日常生活においても多くの消費者にとって新体験だった。その後はフライニットなどのアッパー素材によるフィッティング技術へシフトしたり、「ルナグライド3」のヒットでルナロンクッションがメインとなったり、現在ではZOOMフライなどの厚底系ランニングの台頭で、縮小してしばらく経つベアフットランニング。忘れかけていた「NIKE FREE RUN2」が2021年に再び姿を現し、2022年現在、日本のショップに並んでいるのである。

■厳密に言えば数回の復刻があったり、FREE RUNは今でも継承され後継モデルもある複数ある。「FREE RUN2」のアッパーは熱圧縮によるシームレス2層構造で、軽量化のためにくり抜かれたデザインは現代的。今回のFREE RUNにグッとくるのはアッパーがスエードになっていることだ。

■いつの時代もランニングやスポーツシューズは時代の最先端を行く。人気を博したモデルはアーカイヴとなり、5年、10年と時を経てライフスタイル・ファッションに落とし込まれていく。特に2000年代以降のモデルは、アッパー素材をスエードなどのクラシカルな素材で再構築することで、スポーツシューズだったオリジナルとのカテゴリーとしての差別化になる。あのトレーニング・ランニングシューズの新しい時代を提示したFREE RUNがクラシックになったのかと思うと、月日の流れを感じるのだ。

クラシックという言い方がわかりづらいかもしれないが、例えばスニーカーショップでランニングコーナーに陳列されるのか、ライフスタイルコーナーに陳列されるかの違いである。

■今回商品名から“+(プラス)”の記号が抜けているのは、当時NIKEプラススポーツキットという商品があったことからである。インソール下に500円玉くらいのサイズのセンサーをセットすると、iPodiPhoneと接続してランニング情報を記録できるというもの。この製品がセットできるモデルには、“+(プラス)”記号が表記されていた。

もちろん、このような製品は今では使われない

■気になるのは、やはりFREEソールがファッションの領域まで落とし込めるかということ。違和感なくギリギリのラインはエアプレストだと個人的には考えていて、FREEの屈曲性に全振りした切れ込み入りのソールは、今でもスポーティーに見える。こういった優秀なアッパーデザインを持ちながらもソールがクラシック的でない場合、よく行われるのがソールスワップである。NIKEもNBも数多くあるが、FREE RUNの変遷の中で例を出せば、『KUKINI FREE』がそれである。2000年に発売された『AIR KUKINI』のアッパーにFREEソールを合わせたモデルが2012年に発売された。そういう意味で言えば、AIR KUKINIのソールにFREE RUN2のアッパーというのもアリではないか。

 

■というわけで、今回はそこまで盛り上がっていないFREE RUNについて深掘りしてみた。