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Aimé Leon Dore×ニューバランスのレーニアの解説『Rainier』

New Balanceが変わった数年間

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長い間、本当の意味でダッドスニーカーだったnew balanceはここ3〜4年その見方を大きく変えた。それまでnew balanceの芸と言えばアーカイヴのプレミアムな復刻止まり。確かにUSA製で厳選された素材、究極の履き心地持つモデルは最高のスニーカーには変わりないが、他社と比べ群を抜くハイコストな価格は、ライトファン層ほど手を出さない。

327や5740からそういった企業戦略は動き出していたが、決定的にしたのは2002Rの発売からだろう。古典的なモデルを現代的にアップデートし、アジア製で比較的価格を抑えSNSマーケティングプロモーションする。様々なブランドとタッグを組みながら、パートナーシップを結んだAimé Leon Doreと繰り出されるコラボレーションモデルは遂にNIKEを射程圏内にしている。

アーカイヴの正しい発掘

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Aimé Leon Doreのテディ・サンティスはNIKEのようにアーカイヴをブランド化する方法を知っていた。例えば、550は今まで全く興味を持たれなかった、いわば墓場に埋まったままのバスケットボールシューズだった。当時も全くヒットしていない。しかし、Aimé Leon Doreのテディ・サンティスの発掘により、世界中で最も人気のあるスタイルとなった(日本ではそうでもない)。550と同じスタイリングをしたReebokのクラブC、adidasのFORUM、NIKEAIR フォース1を思い出してほしい。これらは80年代を代表する、ファッションにおいて最も汎用性の高いヴィンテージなシルエットだ。レーニアはアーカイヴの復権の2つめにあたる象徴である。

レーニアの歴史“ルー・ウィテカー

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この記事を見れば大体がわかる、がモットーなので起源から掘りたい。ニューバランスの“レーニアブーツ”は1982年誕生した。それまで実績の無かったハイキングシューズをドロップするためにニューバランスが協力を依頼したのは登山家のルー・ウィテカーである。

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ルー・ウィテカーは世界的に有名な登山家で主に80〜90年代に活躍した登山家。特に氷河地帯を専門としており、世界でもっと危険と言われるマウントレーニアを250回以上登頂に成功している。レーニア山のガイド、そしてホテルとレストランを営んでおり、まさにマウントレーニア専門家である。そう、このモデルのネーム“レーニア”とはまさに、協力を依頼したルー・ウィテカーと共にある山の名前から取っている。

82年に『ニューバランス レーニア・ブーツ』が登場した2年後の84年にルー・ウィテカーはエベレスト、ノースコルの最初のアメリカ人登頂をガイドした。その時に履いていたのは“レーニア・ブーツ”だった。

 

“H710”

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2009年に久かったレーニアはまた姿を現した。2011年頃からインラインとしてH710が登場した。日本市場でもしっかりと展開していて、2009年頃から登山ブームもあったからか、街履きとして良く見ることができた。とはいえ、比較的購買者は中年層が多く、レディースモデルとなると可愛い配色で、一般消費者向けでファッション的ではなかった。スエードでオールベージュやオールグリーンの雰囲気の良いカラーバリエーションもあったが、さほど人気が出ていた訳ではない。派生としてHS77というモデルもあった。

 

2016年の復刻

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2016年に、割と真面目な復刻があった。オリジナルカラーで当時のレーニアそのものである。しかし全くヒットはしなかった。それもそのはずで、当時のスニーカー市場はハイプにまっしぐら、イージー、シュプコラボ、AJ、モアテン真っ只中でスニーカーヘッズは見向きもしないのは当然である。かといって2011年頃のH710を懐かしんでいる人は皆無、82年のオリジナルに思いを馳せている人も皆無だ。ここでも、大きな結果は見出せず平凡にまた姿を消す。

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Aimé Leon Doreが再発掘

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もはやニューバランスをやらせればAimé Leon Doreに失敗は無い。NIKEが得意とするようにアーカイヴを如何に価値あるものにするか、確かな段階を踏みながらAimé Leon Doreが掘り返した“レーニア”にはH710の品番は無い。過去の平凡な実績を払拭するにはこの象徴的なナンバリングを撤廃することは不可欠だっただろう。

ピッグスエードでオリジナルよりもクラシカルな雰囲気を装ったレーニアは、確かにファッションとして現代的である。実際のところスニーカーヘッズというよりは、ファッション感度の高いコア層にピンポイントで向けている。この層は、スニーカーだけでなく、マルジェラのブーツもプラダのスニーカーも、グッチのビットローファーも履く。素材とサイズ感を追求する彼らこそ550を支持している。スニーカーリセールも下降気味な昨今にAimé Leon Doreが仕掛ける戦略はNIKEを凌駕するハイブランド化かもしれない。

 

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