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『マリッジ・ストーリー』考察・解説・レビュー

ノア・パームバック監督によるNetflixオリジナル映画のマリッジ・ストーリー。

主演はアダム・ドライヴァースカーレット・ヨハンソンアダム・ドライヴァースターウォーズシリーズで、日本でも2015年以降一気に知名度があがったが、個人的にはローガンラッキーへの出演でグッと記憶に残った。キアヌのような顔立ちなのに、それほど整ってなく、常にどこか裏腹な感情を持ち合わせていそうな表情が魅力的だ。

スカーレット・ヨハンソンも、『LUCY/ルーシー』(Lucy)やブラック・ウィドウ役で忘れ去られていた超演技派な一面が今作では爆発し、今作『マリッジ・ストーリー』(Marriage Story)はスカヨハの女優としての新たな幕が上がったような気もする。

 

『マリッジ・ストーリー』(Marriage Story)はパームバック監督の、自身の離婚経験が元にされた映画である。故に、非常に奥行きのある男女関係の終わりが描かれていて、トピックにしたいシーンも数えきれない。

 

 

結婚をした全ての人たちが、"決してしない"と誓ったことを正当化するには、難しい。

"男女関係"と"家族"というものを切り離し、理性的に、そしてロジカルに答えを導き出そうとするも、男女関係の上に成り立ち積み上げてきた、家族だった事実は複雑に絡み合い、例え本当に守るべきもの(子供)がお互いに分かっていても正解だと言えるような答えは見つからないし、譲歩も妥協もできない。限界を超えながらぶつかり合ってみても、幸せだった頃の残り火に風を送るようなことをしてみても、全てが裏目に出てしまう。

 

ニコールとチャーリーはどちらも、間違いを犯す欠陥のあるキャラクターでありながら、お互いに強い競争力を持ち、そしてお互いに勝ちたいと望む。でもそれはお互いに息子のことを一番に思っているからである。

結局我々は、どちらかに感情移入するのでなく、二人のことを応援してしまう、そんな不完全な二人。お互いが引き起こした痛みであるのにもかかわらず、彼ら自身の幸せを願いながらその行先を見守る。

 

一番の見どころである、長回しの争いのシーン。徐々に沸沸とこみ上げる感情を、お互いに刺激し合いながら、言ってはならない言葉まで振り回し、戦う。そしてすすり泣き、抱きしめ、謝る。この複雑さの表現は、スカーレット・ヨハンソンアダム・ドライヴァーの真の演技力が輝いた瞬間だった。

 

映画がエンディングへと向かう頃、ニコールと新しいパートナーと、チャーリーとヘンリーが同じ空間に登場する。

紆余曲折しながらも、戦いの末が穏やかに描かれ、時の流れと、争った意味を見つけようとする二人の姿がある。

二人が変わらず、第一に大切にしたかったヘンリーは、一つの証明をする。

読み上げて、とチャーリーに求めるのは、冒頭のそれだった。

リストで表現された愛情が、今もなお生き残る愛の現実を明らかにしていく。

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