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モノとポップカルチャー、それっぽく言ったりたまに爆ディス

PATRICKブランドイメージ戦略

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PATRICKの歴史は1892年に始まり、128年の老舗ブランドだ。日本での販売が始まったのは1978年だが、この時のPATRICKの戦略は当時の日本の1970年代のシーンとは一線を画すものだった。

 

1978年、この当時はアメリカから『ジョギング』という言葉が輸入され日本でもジョギングブームが起こっていた。

それまでスポーツ選手でない一般人が、街をランニングするということは、あまり無かったが、健康的な側面からのアプローチで一気に人気が加速した。言葉の妙というか、ただ走ることに変わりはないのに、ジョギングという言葉を産んだアメリカ人はネーミングセンスが良い。ライフスタイル提案の元祖とも言えるかもしれない。スポーツブランドにとってはジョギング需要で新たな市場が開拓されたタイミングでもあり、今現在街に並ぶ数多のランニングシューズ・クラシックランスタイルの元祖とも言える名作が数多く生まれた。

その70年代後半には、PUMA/イージーライダー、オニツカ・タイガー/エンデューロアディダス/TRX、NIKE/ワッフルトレーナーやナイロンコルテッツなどが人気を博していた。

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当時のPOPEYEの13号は、ジョギング特集。カリフォルニアでランニングする一般人をスナップしたり、ジョギングシューズ解説などが特集されている。

 

そんな時代にPATRICKがイメージ戦略としたのは、ファッションアイテムとしてのアピールである。おそらく、1970年代の日本では例の無い戦略。そのキャッチフレーズが『ー足元にもメイクする』。この時の、ハイファッションの世界に入り込んでいく最初のブランドとしての立ち位置が、現PATRICKのハイセンスでラグジュアリーなスニーカーブランドイメージに繋がっているだろう。

 

MADE IN FRANCEこそ今は無きものの、現在のMADE IN JAPANの創りは非常に精巧である。スポーツブランドのスニーカーは本当に創りが雑なものが珍しくない。ステッチのずれ、接着剤のはみ出しなど当たり前であり、見慣れてしまうくらいだが、PATRICKは安心してじっくりと観察できる。作りの良さもありながら、素材の選定、カラーリングと、時代には全く媚びないスタイル、素材は姫路の50〜60社のタンナーが切磋琢磨し提供する。

老舗ブランドの質実剛健なモノ、もやはトラディショナルと言っても過言ではない。

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東日本大震災以降は、長く楽に歩ける靴の重要が増え、ライトウォーキングやビジネススタイル+スニーカーソールなど、各社あらゆるアイテムを打ち出してきた。年々フォーマルスタイルもカジュアル志向へと移り変わりながら、コロナウイルスによって社会活動の様式は劇的なスピードで変化する。そもそも会う必要が無くなってしまえば、私服に近いスタイルへと移行するビジネスマンは増加し、靴は何を履くべきかというテーマが浮かび上がる。

 

もはやウォーキングシューズや革靴っぽく見えるスニーカー、メッシュだけど真っ黒で目立たない...そんな中途半端に安牌を探そうとするのも終わり、モノのいいスニーカーでファッションを楽しめばいい。

 

いいスニーカーと言うならばnew balanceのMADE IN USA、M996やM1400もあるが、やはりスポーツブランドとしてのイメージが強すぎる。new balanceにジャケット×スラックスはハズシで履くからかっこいい。

adidasのスタンスミスもジャケパンスタイルに合うことは合うが、老若男女ギネスにも載るほど売れている定番スニーカーは果たしてビジネスカジュアルとしてどうなのか。スーツにノースフェイスのバックパックを背負ってしまうようなイメージに近い。

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ウォルシュもMADE IN ENGLANDのクラフトマンシップに溢れた一足で最高にオシャレだが、仕事に使うとして定期的な慎重を見越すなら、比較的手の出しやすいプライスのPATRICKなら、ヨーロッパスタイルでスタイリッシュなラスト、そしてMADE IN JAPANの確かな作り、やはりフォーマルスタイルにキマる。

カラーや素材もバリエーションが効いて、流通も安定していて、定番のレザーモデルならオフィシャルでソール交換も出来る希少なメーカーになる。

日本で展開されて以来40年以上、一貫して時代や、いっときのトレンドに流されないデザインとラインナップは、ブランドへの信頼感と直結する。