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M990v6を解説。11月4日発売!これは名作になるのか。

M990v6はかっこいいか、という考察

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new balanceファン及び、スニーカーフリークの方々には、もはや見慣れた2つの画像。M990v6と思われるスニーカーを手で持つこの画像をアップしたのはテディ・サンティス(Teddy Santis)というデザイナーだ。

 彼は「エメ・レオン・ドレ(AIME LEON DORE,ALD)」というニューヨーク発のブランド創始者である。2021年4月頃、new balanceはテディと長期間のパートナーシップを契約しており、MADE IN USAコレクションのクリエイティブ・ディレクターとして商品開発に携わるという。彼は550の発掘と成功を手始めとして、今年リリースされる900番代の新作を手がけたわけだが、M990v4からv5まで下降気味な評価となった“新作”としての人気を回復できるのか?

横から見たら、なるほど

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今までのリーク画像からわかりにくかったソールのボリューム感が、わかりやすい。これはわりと最近出回ったショットである。

 これでわかったのは、2020年以降トレンドになった厚底系のランニングシューズ、それもデザインではなく機能性に重きを置いた上でのデザインであることが読み取れる。

 つまりは機能性、すなわち履き心地の良さを追求しているということか。ここで気づく。何を言っているのか、new balanceの900番台、1000番台は常に履き心地を追求してきていた。ファンであれば誰もが知っているラルフローレンのあれや、1000点中何点だったとかの逸話の通り、new balanceが評価されてきたのはその履き心地の良さである。

 かっこよさに囚われすぎて、本来new balanceが提示している本質を見失ってしまっている自分に、はっとするのだ。であればだ、993がヴィンテージファッション層に熱い支持を受け、WTAPSなどとコラボしたM992という品番にありがたがっているのはニワカで、本当にnew balanceに心酔しているのならば、V5を日常の足にしているのがあるべき姿なのか。

話を戻そう。

とはいえスポーティーに振りすぎてしまえばnew balanceの900番台が持つフラッグシップ的価値観が失われしまう。ファンのイメージに刷り込まれたこのアッパーデザインがそうさせるのか、はたまた無駄にゴツゴツしていないスムージングされたミッドソールなのか、900番台にふさわしい“上品さ”は兼ね備えている。

上記の画像を見て思い浮かんだ他社のミッドソールのスタイルを並べていく。

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昨年の箱根駅伝で注目を浴びたNIKEのランニングシューズZOOMフライ。カカトがせり上がり全体的に台形なシルエットなのはバレンシアガなどの印象深いダッドシューズ的なデザイン面もあるだろう。厚底ランニングの火付け役となったこのモデルは、new balanceが次世代の990を創り上げる過程の中で、コンセプトとなったアイディアの根元を辿ると、枝分かれした部分にこのZOOMフライがあるだろう。

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毛色はM990シリーズとかなり近いHOKA ONEONE。セレクトショップでも提案され、ショップスタッフもHOKAは履き心地がやばい、一目置く存在。そんな声を聞きすぎたせいか、”HOKAを履いている俺は一枚上手” 的な上質なイキリアイテムにも感じる昨今。

 

アメリカでは日本で言うアシックス的な認知度を持っているランニングシューズメーカーだが、ライフスタイルカテゴリーではブラックやベージュなどのワントーンに、ビブラム・ゴアテックスなどを搭載した機能美溢れるスニーカーだ。正直アウトソールのビブラムを除けば、M990v6のソールデザインとかなり近いのではと思う。

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日本においてsouconyは下火下火の5年。ただ2021年発売したendorphinは高い評価を得た。厚底か厚底じゃないか、、ギリギリのボリューム感はデザイン的にもいい塩梅で、さらにミッドソールに内蔵されたカーボンプレート、アスリート的なキーワードで2万円でもランナーなら持っておきたいと思える一束。ローリング効果を高めるために爪先とカカトがせりあがっているが、これをフラットに近づけるとM990v6のソールに非常に近くなっていく。990はランニングにガッツリ使うようなシューズではなく、半分大人の嗜み的な側面が強い。そういったニーズから的を外さないために、走るための機能性は抑えている。POPEYEでシティーボーイのランニングスタイルとしてM990v3が紹介されていたのを見た時はなんとも言えない気分になった。

 endorphinを細かく見ていくと、v6のコンセプトが見えてくる。ありがとうendorphin。

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adizeroもこうやって厚底になっていく。後発でここまで分厚くやってくると冷めるのが人の心理。厚底もチャンキーソールもダッドシューズも、もはや過去のものとなり始めているこの頃、絶対にnew balanceはこうなってはいけない。少なくとも900番台だけは本当にいいものは何かを追求して欲しい。こういったソールに慣れてしまった現代人の足に、やっぱりnew balanceは良いと言わせるためにはどうするか。少々厚くはするが、素材の機能性で勝負する他ない。adidasは柔らかすぎて反発が無いboostから脱却し、下は5000円代から採用されるLIGHTSTRIKEというミッドソールを採用している。

NIKEのルナロンも良かったがZOOMブランドも確立している。それ以上に、アブゾーブやREVライトを持つnew balanceに隙は無い。

new balanceは何をしたい?

ここ数年のnew balanceの新作で最も印象深かったのはMS327だ。70年代のアーカイヴの320・350・super compをデザインソースとし大成功した。

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550はnew balanceの歴史の中でも影が薄かったがテディによって発掘され、new balanceのコートカテゴリーを盛り上げている。一時はNIKE AIR FORCE1に肩を並べるほどだったadidasのFORAMの存在感は、今は見る影もなく、その椅子を550は狙っている。

つまりアーカイヴをいかに作るか、育てるか、とはスニーカーブランドとして最も重要であるが、NIKE一強時代に幕を下ろすかのように、そういった面においてnew balanceは見るからに力をつけている。

  当然ながら990のニューモデルなんていうビッグネームは相当試行錯誤されてデザインされているはずだ。今までのアーカイヴから何を学びながら出来上がったか見てみたい。

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アッパーから考察していく。アッパーメッシュ部分の骨組みはv5に近いながらも太さが993に近い。Nロゴマークはv4で大きくなりv5で998と似た、他のパーツと接しない浮いているような配置になったが、v6ではシューレースホールパーツと下部に潜るように配置されている。これはMS327オーバービッグロゴにデザインソースがあるはずだ。

 アッパーがスラムドされソールが分厚くなったように見えるが、おそらくソールがアッパーに巻き上がっておりそう見えるのだと推測する。ここが最も印象が変わったように見える要因だろう。ソール自体はカカトから上部から真ん中に流れるグレイの部分の形状を見るようにM992と近く、リアのクッションはv5と同じように2段になる。

 やはりトレンドデザインを汲んでか全体的に台形なシルエットになっているためカカトは外に向かって斜めになっている。990とマークが入る部分は初代990から998までのヒールカウンターを模しているように見え、履き口の形状はパーツはM993やM992に似ているがボリューミーな雰囲気がM995/M996のようである。

 

確実値上げされるv6。ハイプが終わるから、愛されるのは本当にいいもの

 

高利回りで2次流通を繰り返しながら、ミーハーの物欲と承認欲求を満たし続けてきた時代から脱却したいのは誰か。言わずものがな、メーカーである。収益を上げるに最も効率が良くシンプルなのは顧客の単価を上げることである。例えば2次流通で倍の値段のプレ値がつくなら、最初から倍の値段で売りたい。2次流通の相場にはメーカーの夢が詰まっている。この値段で売れたら粗利はいくらになるのかと、計算すると恐ろしいアイテムが溢れるほどある。そういえば私たちは徐々に徐々に、定価が上がっていることを盲目的に受け入れてきた。M990は2011年頃まで日本では¥19,000だったしM1400は¥23,000だった。ハイプライスを受け入れ大金を叩けるのはそれが本当にいいものだから、という時代になる。まさにそれは10年前である。今や話題に上らないM2040を覚えているだろうか。2012年にそれは発売した。定価4万円弱というとてつもない値段。new balanceをこよなく愛するマニアだけが手に入れたM2040は1000番台最後の品番である。スニーカーに2万円でも臆する時代に4万円はさすがに早すぎた。ここまでくるとイタリアやフランスのハイブランド並である。

 10年の沈黙を破り2022年には新作が出るはずだ。その布石となるのは確実にM990v6の他ならない。そしてスニーカー中間層はロープライスでそれなりのものに落ち着いていく。さらにさらに価格差の分断は続き、その分かれ目となるのはM990v6ではないか。