スグループ

モノとポップカルチャー、それっぽく言ったりたまに爆ディス

ストーンアイランドとニューバランスの考察で脱ニワカ

『オレは、ストーンアイランドを着ている』

そう言わんばかりに左腕にコンパスのロゴを掲げたサブカルHIPHOP愛好者は、少し体を右に向けてInstagramに写る。supremeなんて、郊外の自称オシャレヤングパパのイキリアイテム化しているし、今イケいるのはストーンアイランドだ、見たいな空気感が流れてもう長い。今更、ストーンアイランドってなんだ?ってググり始めた人に届けたい脱ニワカのための記事を書いてみようと思った。

 

ストーンアイランドの変遷

1982年、イタリア北部の街ラヴァリーノで設立したストーンアイランド。ストーンアイランドを最初に支持したのは、80年代のミラノで『パニナロ』と呼ばれた若者たちだ。彼等は、50年代のアメリカと60年代のモッズをミックスし、イタリアのデザイナーレーベルのアウターでまとめていた。フィラ、セルジオ・タッチーニ、ストーンアイランド...。一方80年代のイギリスでは、サッカーチームがヨーロッパトーナメントで一貫した成績を収めていて、ユースカルチャーはサッカーと音楽と共にあった。熱心なサッカーファンは、サッカー観戦と共にヨーロッパ中を旅行していたが、彼らがイタリアで見たのは、ストーンアイランドを纏う、パニナロのエキゾチックなファッションスタイルだった。英国へ持ち帰るとサッカーテラス⁽¹⁾はたちまちストーンアイランドで埋まった。自分たちのグループを象徴するユニフォームとして選ばれた。イギリスにストーンアイランドが渡ったのだ。

その後長い間、ストーンアイランドはマイナーレーベルだったが、カナダのMC、ドレイクとイギリスのグライムMCのスケプタの新たな友情が始まると、ドレイクはストーンアイランドを強くプッシュした。特にストーンアイランドとシュプリームのスウェットシャツはすぐにドレイクのInstagramにポストされ、瞬く間にストーンアイランドは世界中の目に留まり、リバイバルを成功させた。

 

⁽¹⁾英国でサッカースタジアムのテラスは主にゴール裏のスタンド席を指す。比較的安く、サポーター同士で自由に集まれるため若年層が多く、ユースカルチャーの象徴的な場所とも言える。

new balanceとのコラボレーション

さて、ストーンアイランドの歴史をざっくりと振り返ったところで、2021年3月に長期パートナーシップを結んだ、stone island×new balanceについて触れたい。2023年1月5日にドロップするnew balanceの574legacy×ストーンアイランドだ。モデルは2022年7月に発売された『574 legacy』。従来の574よりもソールは厚みを増して、ミッドソールとアウトソールはフレアに広がるデザイン。各部ディテールがアップデートされたこのモデルは900番台をやり尽くして、327も2002もxc72も履いた、10年前は1400や1300をよく履いたけど...みたいな人のツボを抑えるに違いない。いや、もっと正確には『これが今一番調子いいニューバランスだぜ(コラボしてるし)』である。

シュータンには目一杯のストーンアイランドの方位磁針のロゴがセットされ、「俺が履いているのはストーンアイランドである」と語るに十分すぎる出来である。アッパーのナイロンに見える部分は、ストーンアイランドらしいハイテクなマテリアル⁽²⁾に違いない。過去に3度、ニューバランス とストーンアイランドはタイアップしているが、今回が最もハイプビーストであることは間違いない。恐らく価格は3.5万だと予測できるので、二次流通は5万円を超えるだろう。

 

⁽²⁾ストーンアイランドの原点は繊維の技術。創業者のマッシモ・オスティは4万を超えるマテリアル(生地)を開発・研究し、代表的なものに『感熱セーター』『液体反射ジャケット』などがある。

 

過去のnew balance × stone island

TONE ISLAND × TOKYO DESIGN STUDIO NEW BALANCE FUELCELL RC ELITE SI ECRU/RED  ¥35,200 

2021年の第一弾、FUELCELL RC ELITE SI。ノーマルのRCエリートも3万弱だが、こちらは正規価格は¥35,200だ。前足部に窒素を混入させたフューエルセル構造のクッションとカーボンプレートで異次元の反発性を持つ。2021年10月に発表されリリースは同年11月5日だった。そもそもストーンアイランドは機能性ウェアのブランドだ。クラシックなモデルではなく、ニューバランスが現在も忘れることなくクリエイトし続けるハイエンドランニングシューズを選ぶことは自然である。

 

Stone Island × TOKYO DESIGN STUDIO New Balance FuelCell RC ELITE v2 ¥35,200 

第二弾も同じくRCエリート。第一弾からはモデル名が変更されているが同じモデルだ。ニットアッパーに、M576を彷彿とさせるニューバランスのクラシックカラー、バーガンディーミックス。RC ELITEであることは変わらないが、ニューバランスのレガシーを彷彿とさせるカラーであることは間違いない。

new balance Furon v7 ¥35,200 2022年11月21日

初のフットボールコレクションである。冒頭で書いたように、ストーンアイランドとサッカーは深い繋がりがある。カラーはストーンアイランドのアーカイヴのカモフラだ。

 

 

そして今回のM574 LC。

f:id:sugroup:20221227093711j:image

f:id:sugroup:20221227093717j:image

f:id:sugroup:20221227093736j:image

Stone Island × New Balance 〈574 Legacy “Steel Blue”〉U574LGST 

 

2022年7月に発表されたU574LGをベースにした今回のコラボレーション。ストーンアイランドコラボ発表前に、果たして574LG注目していたスニーカーフリーカーはどれくらいいたか。そもそも、574は一部UK製はあったものの、ほとんどが1万円弱の流通モデルで、マス向けライフスタイルスニーカーなんてイメージが強い。574LGが発売しても、当然フォルムは574であり、ソールのアップデートには大した関心も示さず、「なら他のニューバランスを買うよ」と言う人も多かったのではないか。

f:id:sugroup:20221227094934j:image

ここ何年かのニューバランスブランディング戦略はNIKEになりつつある。574は“legacy”という上位互換の称号を与えられ、その付加価値を絶対的なものにするストーンアイランド。900番代のブランドコラボも最近は頭打ちしている印象もあった。今後80年代クラシックのアーカイヴがピックアップされていく流れの決定的な一足ではないか。