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“1906D プロテクションパック”からニューバランスを考察・解説

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2010年に登場したMR1906

さて、この姿に見覚えはあるだろうか。2010年にリリースされた『MR1906』。1906年創業の意味を込めたこのモデルは記念碑的モデルで当時の最先端が詰まった“ランニングシューズ”だった。まだまだ2000年代名残の残る荒いメッシュにシルバーやゴールドのパーツ。いかにもランニングシューズな出立ち、ソールにはN-ERGYフルレングス。12年後の2022年はY2Kプロダクトが脚光を浴び、ニューバランスから同年8月にドロップされたのは『M1906R』。2002Rと同じく“860V2”のツーリングにスワップされ、絶妙な現代版アップデートを遂げていた。

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“2022 M1906R”

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“2010 MR1906”

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“2022 M1906R”

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“2010 MR1906”

 

ニューバランスの躍進

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アメリカではオッサン靴のイメージから抜け出せない2010年代前半。一方日本ではUA栗野氏やPOPEYEを始めとしたファッション提案、あるいはMADE IN USAフリークの心を掴んでいて、“知ってる人は知ってる良い靴”として、ある程度ストリートでも需要は広がりつつあった。それでもNIKEのように、ビッグネームコラボやハイプビーストに括られるようなシグネイチャーもこれと言って無く、思い出せるのは衣料量販店ジェイクルーとのM1400別注カラーくらいだ。

風向きを完全に変えたのはエメ・レオン・ドレを率いるテディ・サンティスとのパートナーシップだ。彼が目をつけたアーカイヴは次々と成功し、誰も目をつけていない、言い換えれば墓場に埋もれたままのバスケットボールシューズの550をプレミア化したのは大きすぎる功績である。

 

2002Rの成功

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そして、何よりニューバランスの今後を変える象徴的なモデルは2002Rである。2010年以前からのnew balance信者は”MADE IN USAアーカイヴの復刻があるのか無いのか”尽きるが、置き去りにされたままのM2002はどうするんだろう?と何か重要な発表を心待ちにしていた。それを打ち砕くかのようにドロップされたM2002はアジア製だった。「USAじゃないの?」と疑問符を付けた人たちは古参コアファンである。彼らなら3〜4万円でも有り難がって買うだろうが、カジュアルな消費者からすれば明らかに高すぎる。アジア製でコストを抑えることは、よりマクロな視点でのブランディングに必要不可欠だった。そしてNIKEを見習うかのように、2002Rから最も顕著になったSNSマーケティング。著名人のポスト、インフルエンサー。そこに二次流通業者・botによって即座に売り切れる希少性が後押しし、カジュアルな消費者にまで魅力的に映り、ニューバランスは遂にNIKE化した。

“プロテクションパック”

今後発表される2つのモデルが注目だ。一つは1906R プロテクションパックである。

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4色展開だが、このWHITE/BLACKは秀逸すぎる仕上がりだ。スニーカー好きのツボとして、あるモデルが時を経てパフォーマンスからストリートにフィールドを移すとき、ナイロン・メッシュからスエードになった姿で再会する時が最も楽しい。最近ではFREE RUN2もその類だった。

つま先はの膨らみや甲の高さまでボリューミーなのは、サロモンやホカ、アシックスでトレイル系が馴染んできた最近の足元事情にもマッチするし、ランニングベースの機能美をスエードにしてしまうと、途端にアーティスティックなデザインに見える。裏を返せば、これだけウケそうな見てくれをしていれば、そう簡単にこの所有欲は満たされないことも容易に想像できてしまう。

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New Balance The 2002R  “Protection Pack”

プロテクションパックは2002Rですでに成功していて、そもそもアーカイヴからソールスワップして復活したナンバリングであること、アジア製であることも含めば1906Rは2002Rの道筋を追っている。むしろ2002には1000番代の超フラッグシップという付加価値あったが1906は、それほどの強い背景が無い。今後、2002が作ったレールで、2000年代の埋もれたアーカイヴが大きな意味を持つことが確立された。3万越えのUSA・UKを狙うコアファン、インライン・流通品番を日常使いする一般的な消費者、その真ん中を埋める馬鹿でかい市場をニューバランスが席巻するのはこれからが本番だ。

 

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