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ダイエットシューズの始まりから終わりまで。

09年2月、reebok(リーボック)の『EASY TONE(イージー・トーン)』を皮切りに、"ダイエットシューズ" "トーニングシューズ" "シェイプアップシューズ" などとカテゴライズされた履くだけで痩せる・引き締まるシューズがブームになった。

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代表格の『EASY TONE』は二つのバランスポッドをソールに搭載し、全方向にグラグラとさせることで、自然とバランスを保つため筋肉消費されシェイプアップに繋がるというもの。当時REEBOKはEASY TONEで歩くと、ハムストリングス・ふくらはぎ・臀筋の筋緊張が28%向上すると謳っていた。

"履けば履くほど美しいお尻"という大々的なキャンペーンを打つと一時生産が追いつかないほど飛ぶように売れたという。

『このシューズを履いたら−○○cmダウンしました!』週刊誌の最後のほうの広告のようなモニター記事もネットに溢れていた。

 

 

同09年には、アメリカではブームとなっていたSKESHERS(スケッチャーズ)の『シェイプアップス』も日本に上陸している。

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『シェイプアップス』は前後方向に丸みを帯びたソールが特徴で、非常に厚底だが素材はかなり柔らかく、グラグラとする。独自に"ローリングシューズ"とも呼称したこのシューズも、歩く際にバランスをとることが必要とされ、その名の通り、シェイプアップを期待できるシューズとして人気を博した。

 

2010年には、アメリカでのトーニングシューズの市場規模が1000億円まで膨れ上がると同時に各メーカーが参入。プーマは『ボディートレイン』、new balanceは『トゥルーバランス』など様々なモデルが登場し、ウォーキング・ランニングに次ぐ新たなカテゴリーとして定着すると思われていた。

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しかし、2011年になると、トーニングシューズの新規顧客は目減りし、リピーターが中心となっていった。本当のことを言えば、普段そこまで歩かない人が靴を変えただけで痩せるわけがないし、多少なりとも効果があっても、シェイプアップが持続的に実感できるわけがないのである。また、メーカーが商品の機能性アップデートをほとんど行わなかったのが、真実を物語っている。日常使いで、さほど効果が無い物はアップデートのしようがない。

そうして、ブームが一回りした頃、アメリカでリーボックアメリ連邦取引委員会か訴訟指摘を受け、賠償問題となる。

"「イージートーンを履いて歩くと、他の運動靴と比べヒップが28%引き締まり、ふくらはぎの筋肉が11%多くつくことが証明された」という広告には科学的根拠がなく、機能を過大に表示していると指摘し、2011年9月にリーボックは2500万ドル(約19億円)を支払うことで和解した。リーボックはイージートーン製品を購入した人への返金に応じている。"

 

 

この賠償問題が起きると、一気に目の覚めた消費者からは見放される。バランスが悪いことから転倒の危険もあるなど、危険性も注視され、商品を一時売り場から撤去したり、注意書きの紙を同封したりとブームアイテムとしての勢いは急ブレーキで失速した。

 

その後は投げ売りセール価格が続き、各ブランドもトーニングシューズ市場から撤退しカテゴリとしては消滅していったのである。

 

イージートーンブームで一時的に美味しい思いは出来たが、その代償はでかい。現在のリーボック堕落は10年前から始まっていたのだと再認識させられる。

もしかしたらNIKEのモンスタースニーカー、AIR MAX 95と対等に渡り合えたかもしれないPUMP FURYというアーカイブがありながら、ブランディングをお粗末にし、一過性のブームで食いつなぐ。

対してNIKEはトーニングカテゴリーに参入していない。

 

 

そんなブームの裏で、NIKEが温めていた新たなソール革命がブーム間近となっていた。

"NIKE FREE RUN +3"が発売する。

 

 NIKEはプロモーションで『アフリカ人はなぜ足が早いか?裸足で走っているからだ』と語る。

NIKE FREE RUNの登場で一気にメインストリームに持ち上がった『ベアフットラン』である。靴を履いた状態でもなるべく裸足に近い状態をキープするトレーニングシューズだ。

トーニングシューズとは真逆の発想だ。

まるでサイケデリックロックのように散った夢物語の、まさに反動のようなカテゴライズである。

 

 

 

実際の所、こちらも短命なカテゴリではあったが、注目はNIKEが牽引したという点であろう。

 

続きは別の記事で。