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【映画】フローズンタイムを考察してみる

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フローズンタイムという映画を見た。

究極にオフビートなスーパーの店員たちによるおふざけシーンは本当に好み。

 

2012年に完結したドラマ『CHUCK/チャック(2007-2012)』の家電店バイ・モアで働くモーガン、レスター、ジェフリーの奇抜でぶっ飛んだおふざけタイムが大好きだった。仕事をサボり何か面白いことはないかとイタズラばかりしていて、賢くないが故に突拍子も無い行動で大迷惑を起こすような救いようの無いダメ野郎たち。

 

フローズンタイムで、ベンが不眠症で余った時間を売るために選んだ先のスーパーには『CHUCK/チャック』のそれと同じような、緩い管理下のもと、いかにふざけて時間を潰すかに精力を尽くすタイプの人間が集まっている。これは面白かった。たまにある映画の脇役たちのバカみたいな生産性の無い遊びが本当に好き。

 

さて、映画の本題について。とりあえず言っておけばアート映画に分類されると思う。動機はあるものの、はっきりとした因果関係を追わない。偶発的な出来事の中で、川の流れに身を任せるように話は進む。それでも時に、景色の中に美しもの、珍しいもの、尊いものなどを発見することで、ベンは自分自身の現状を外側から理解していく。今、自分陥っている状況はいったいなんなのか。急に芽生えた感情は、どこからやってきたのか。閃く瞬間がある。閃きとは本来、一瞬の出来事であるが、そのプロセスをベン(画家)という人物を使って説明しようとしている。

彼が時間を止めることができたことは、理由も有耶無耶でよくわからない。普通に考えれば時間を止めることがメインのストーリー映画であったならば、もっとにはっきりと時間を止められた理由やルールについて言及すべきだ。

それをしないのは、時間を止めること自体には意味が無いからだろう。時間が止まっていて、その中でベンは止まった時間の中を自由に行動できる。それは一体なんなのか?これをあなたはどういうことだと考える?という問いかけとして捉えていいと思う。

 

監督はそもそも、写真家らしい。カメラマンは瞬間を切り取る芸術家であるが故、静止した世界にあらゆるプロセスを想像するプロである。人間の思考の0と1の間を考察した映画なのではないかと。

 

 

ただ、スーパーの中で時間を止め女性を脱がしてデッサンするシーンはあまりアートを感じない。あれはどちらかといえばエロティックだ。脱がす女性がみんなモデルのように細く綺麗な人ばかり。童貞的妄想。時間が止まった世界を表現することも今や斬新でも無い。止まってる世界の表現なら『ビッグフィッシュ』の映像美には到底及ばない。最後の雪とかなんだあれ。雑だなと思った。クライマックスのはずなのに台無しにしてないか?