レオンの行方が気になる。
シリーズ1作目から3作目までに登場した、まだ無名に近かった役者を4作目にしてまとめて再結集する、巧妙な"なんかめっちゃアベンジャーズ感"の奇跡的なV字回復を経て10作目まで製作が決定している『ワイルドスピード(The Fast and the Furious)』シリーズ。
キャラクターは増える一方で、あのデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)ですらファミリー化し始めているので、もうどうにでもなれ感もある。
子供の頃から映画好き&クルマ好きでワイルドスピードはディスクが傷だらけになるほど見た。大人になっても変わらない。年2回のペースで見続けている。旅行みたいなもんだ。
今日もまた、1作目のワイルドスピード(2001年/ロブ・コーエン)を見るたびに思う。レオン(ジョニー・ストロング※以下ストロング)はどこに行ったのだろう。とにかく事あるごとに"ファミリー"を連呼するドムは初期のグループメンバー、レオンに少しでも想いを馳せたりはしないのだろうか?
ファンならば、未だにその後の言及が無いレオンが何をしているのか?想像している人も少なく無いだろう。
試しに検索してみると、4作目の『ワイルドスピードMAX(2009年/ジャスティン・リン)』に登場するカーチューナーがレオンだとする内容がヒットするが、これは間違いである。ストロングは『ブラックホークダウン(2001年/リドリー・スコット)』以降、『ルール 無法都市(2010年/ウィリアム・カウフマン)』まで映画に出演していない。その間俳優業を休止、アーティスト活動に専念し3枚のEPをリリースしている。
(※これがレオンだと記述されているのは日本語圏のみで、ソースが知恵袋以外に無いため、謝った知識の受け売りの連鎖だろう。)
1作目以降、行方がわからないレオンはどこへ行ったのか?そしてレオンはシリーズに復帰するのか?
ここから海外メディアのストロングのインタビューを参考に考察していきたい。
ストロング本人はカムバックを望んでいるのだろうか?
実は、望んでないのだ。ストロングはワイルドスピードへの復帰を質問された時、信念として、"ただフランチャイズに参加するのではなく、演技よりもっと深い創造的なプロセスの一部になること"と語っている。ワイルドスピードは大ヒットを重ね、今や大きなビジネス事業となっている。その中で、ストロングは創造的で有機的な配役が求められるのであれば、復帰する意味もあると考えているようだが、現段階ではシリーズに対して前向きな姿勢では無い。"私自身が、本当に何かを意味するときのみ、プロジェクトに参加する。それ以外は時間の無駄"と語り、非常にアーティスト気質な人物であるようだ。
莫大な金の動き、一流俳優が名を連ね、ドル箱シリーズとなった今、彼がワイルドスピードシリーズに参加する意味が無いと考えるのは頷ける。
レオンというキャラクターについて。
ワイルドスピード1の『レオン』役についてこう語っている。
"レオンを理解すれば、彼が現れたのと同じように、彼が姿を消して前進するのが何故か理解できるだろう"
ワイルドスピード(2001年/ロブ・コーエン)にて、ミアとブライアンが二人で食事するシーン。ミアは彼らの生い立ちについてこう話す。
"ヴィンスはドムの幼馴染で、レティは10歳の頃から車フリーク、それで、16歳の頃に兄貴が目をつけた。ジェシーとレオンはある日現れて居ついてしまったの"
つまりヴィンスとレティは地元の長い間柄にあるが、ジェシーとレオンは、いわゆる流れ者的な設定だ。二人はヴィンス、レティ、妹のミアと比べると関係性は浅い。ストロングはレオンというキャラクターについて、"単にヴィン・ディーゼルの「ギャング」としてのウェイトを増やすだけのものだった、どこからも出現しなかった漂流者"と話している。ワイルドスピードという映画の中で、ドムは中心人物で、人望があり、リーダーだ。ドムのキャラクター造形の一環に、居着いては消えていくマイナーキャラクターは必要不可欠であり、シリーズ中には何人もいる。レオンもその一人だった。
レオンが消えた理由は?
ワイルドスピード(2001年/The Fast and the Furious)劇中のセリフやストーリーから考察していこう。
ドム、レティ、ヴィンス、レオン、ジェシーの5人が初期ファミリーだ。腕っ節が強く感情的なヴィンスと、メカオタクで気が弱いジェシー。そしてレオンは中でも賢く後ろから見守るタイプで、危機的な状況に敏感である。ジェシーが無茶な誘いに乗った時も「相手が悪い、やめておけ」と忠告するのはレオン。
ジェシーが消えた状態で深夜の強奪を決行する。強奪に使用するシビックの隠し場所で、この時ジェシーは「ミアの言った通りだ、悪い予感がする」とドムに忠告するが、ドムはこれを「やめろ」とシャットアウトする。ドムへの不信感は徐々に形になっていく。
この後ヴィンスは強奪するはずだったトラックのドライバーによる反撃で、レティはクラッシュして重症を負う。
悪い予感は的中し、ドムへの不信感は確実なものになった。
そのあとにジェシーが殺される。この直前、ブライアンは「レティとレオンはどこに行った?」と聞くとドムは「二人は消えた」と答える。
おとり捜査の発覚、重症を負った二人の仲間、ギャングからの攻撃。悪い状況が重なり、レオンはドミニクのコミュニティに見切りをつけた、と見れる。ブライアンを連れてきたのはドムだし、まだドムに忠誠を尽くすなら行方知らずのジェシーの救出に同行するだろうが、それをせずに消えたということだ。レオンはまた、どこかへ漂流していったのだ。一人でやってるか、新しいリーダーを見つけているかはわからない。
しかし、ワイルドスピードの世界のどこかに、今もレオンがいるということも事実だ。
一時は噂が立ったが...
ワイルド・スピード SKY MISSION(2015年/ジェームズ・ワン)の制作時期にレオンが戻ってくるのでは無いか?と話題になった。これに対して、ストロングは公式な回答をする。
"私には様々なプロジェクトがあるが、そのリストに「Fast and Frious」の名は無い"ときっぱり否定した。とにかく、ストロング自身にとって意味のある配役で、アーティストであることがストロングの信念。消費されていくマイナーキャラクターである以上は復帰は無い。
とはいえ
ファンとしてはストロングの言うことがよくわかる。もちろん近年の作品も大好きだが、極めて即物的で規模を拡大し続けている近作に不安が募る。ドウェイン・ジョンソン、ジーナ・カラーノ、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・ステイサム、トニー・ジャー、カート・ラッセルとキャスト陣もヴォリューミーに、舞台はLA、マイアミ、東京、リオデジャネイロ、ロンドン、アブダビ、空、氷上、あとは宇宙くらいしか残ってないような気がする。それでもあと2作品残っているのかと思うと、と戸惑いを隠せなくなる。海上とかやめてくれよ。
拡大化を一旦落ち着かせて、少しシリアスになっていみてはいかがだろうか。エレナやデッカード・ショウの扱いについては酷評だっただけに、製作陣も『これが初作』としても見れるような完成度の高い話をそろそろ見たい。奇抜なアクションをするためのやっつけストーリーではなく、脚本に予算をかけてほしい。
例えば、ドミニク・トレッド一人になってしまう悲劇があっても、衝撃作だ。ドミニクの元に現れた救世主、レオン、なんてのもいいんじゃないだろうか。
ジェシーが撃たれたあの日、レオンとレティはどこへ向かい、どこで別れたかなんてのもフラッシュバックなどで見せてほしい。素人意見。
奇跡のV字回復シリーズ、がこのまま右肩下がりに飽きられてしまう前に、ダークナイト(2008年/クリストファー・ノーラン)のような衝撃を求めている。
参考サイト