スグループ

モノとポップカルチャー、それっぽく言ったりたまに爆ディス

トイ・ストーリー 謎の恐竜ワールド 考察 レビュー

f:id:sugroup:20180622155411p:plain 

トイ・ストーリー 謎の恐竜ワールド」(トイ・ストーリー なぞのきょうりゅうワールド、英語:Toy Story That Time Forgot)は 2014年、ディズニーピクサーが共同制作したアニメーションである。 アメリカで、2014年12月2日にABCテレビスペシャル番組として放映された。日本では、2016年3月2日にDVDとBlu-rayが発売された[1]

トイ・ストーリー3』に初登場したトリケラトプスのおもちゃ、トリクシーが主人公。

 

ボニーは友達のメイソンの家に遊びに来た。メイソンはテレビゲームに夢中で買ってもらったばかりのおもちゃ、"バトルサウルス"で一度も遊んでいない。子供に遊んでもらったことのない彼らは、おもちゃ上の設定を信じて生きており、それを率いるのはクレリックだ。

f:id:sugroup:20180622140236p:plain

クレリック(The Cleric)

 

クレリックだけは自分たちが"おもちゃである"ということを知っていて、おもちゃたちを支配下に置くため、真実を隠している。

この独裁的な世界を変えるのがリーダー格のレプティラス・マキシマスとボニーのおもちゃトリクシーの出会いだ。特典映像の制作秘話でこう語られている。

"戦うことが全てだと信じて生きてきてが、心のどこかで疑問を抱いていたんだ。そこにトリクシーが現れた。トリクシーとの出会いが彼を変える。"

 

f:id:sugroup:20180622141121p:plain

レプティラスとトリクシー

 

 

子供に遊ばれたことがない寂しさ、キャラクターの設定を信じたままということ、過去の長編でプロスペクターやバズの姿で描かれてきたので、バトルサウルスたちがトリクシーをはじめとしたボニーのおもちゃたちに、"子供と遊ぶ幸せ"を教えてもらう展開になることは安易に想像できる。となると「また同じことを」と感じる人も少なくはないと思うが、初登場の彼らがどのようなプロセスでそこにたどり着くか?ということが今作の見所である。

 

『おもちゃの境遇』は長編3作を通して様々なパターンが描かれてきたが、バトルサウルスたちが今までと違うことは、子供に遊ばれることを知らずに設定を信じたままのおもちゃたちが莫大な人数のコミュニティであるということだ。一作目のようにバズ一人と向き合うだけでも長い道のりだったが、テレビ番組の21分という枠の中で彼らを変化を収めるために、「自分が何者なのか」とすでに疑問を感じているレプティラスや、支配者のクレリックが唯一真実を知っていてそれを隠していること、などで素早く展開させる。

 

とはいえ、レプティラスが自分がおもちゃだと悟りショックを受けるのは、レプティラス・マキシマスのパッケージの箱を見たからだ。二番煎じとまでは言わないが、大量に陳列されたバズ・ライトイヤーを見てしまうバズと同じ経験だ。それでも、全く否定はしない。パッケージはおもちゃの真実を語る唯一のものであるし、誰しもそこに行き着くまで同じ経験をして成長している。自分はおもちゃで、自分よりもっと大きなものがこの世界にたくさんあること、そしておもちゃが自分自身を知り成長するには、この経験を省けない。

子供の頃は、自分が特別で世界の中心だと思っている。でも、大人になるまでに気づく。世界の、ほんのちっぽけな存在で、社会の歯車である。それは悪いことではなくて、生きる意味や幸せはその中に生まれる。おもちゃにとって、パッケージが意味することだ。

 

トリクシーはレプティラスに"世界はもっとずっと大きいのよ あなたが誰だか教えてあげる いろんなものになれるんだよ 何になるかは持ち主の子供がきめるの 大切なのはいつも子供のそばにいること"とおもちゃの幸せの形を説くと、レプティラスは肩の荷が降りたように持っていた武器を手から離す。

これは大人になるということのメタファーだ。

 

この次のシーンが全てだ。ゲームの電源を切ったことで、机の下のレプティラスにメイソンの手が伸びる。この瞬間、レプティラスは無機物に切り替わり、おもちゃの表情に戻る。倒れかかったレプティラスの背中を支えたメイソンの手。レプティラスは初めて持ち主の手に触れる。おもちゃとしての最高の瞬間を迎えた。

この無機物と有機物とのスイッチングが、トイストーリーでもっとも美しい瞬間。トイストーリーで初めてウッディが動いた時におもちゃに吹き込まれた命は、こうして20年以上生き続けていることが嬉しい。

 

f:id:sugroup:20180622155336p:plain

トリクシーがおもちゃは何にでもなれると話した時、レックスは"アンディは僕を怪獣としてしか遊んでなかったよ!"と話した。彼らがアンディとの思い出を語るのは凄まじい幸福感に包まれる。このショットの右上に、ボニーがアンディからおもちゃを譲り受けた時の写真が飾ってあるのが見えて、ウッディやバズはたまにこの写真を見ながら昔を懐かしんだりしているかな?と、描かれない彼らの生活を想像させる小ネタが配置されているのも嬉しい。

 

最後にエンジェルキティが話したことを。

 

"広い心で世界を受け入れなさい"

"出来ないと言う概念は、自らを縛る足枷です"

"人に与える喜びは自らの身に帰ってくるよ"