sugroupの考察したがりマンブログ

すぐに忘れてしまうから書いて覚える。

枕を簡単に洗えると思うなよ?

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過去最高気温の記録を各地で塗り替えるほど猛烈な酷暑だった。今年の夏の良かったところと言えば、洗濯物がパリッパリに乾くことくらいだ。敷布団や、7月に買ったばかりの枕は、天日干しを頻繁にして、直射日光の力に頼りながらの寝具ライフであったわけだ。

9月上旬、ようやく残暑の影も潜め、雨の日が続いた。開けっ放しにした窓から少し秋の匂いがする風が吹く朝、外をトラックが通り過ぎる音で目が覚めた。今日も雨だ。ここ一週間は雨が続いていて枕の天日干しもできていない。枕は洗濯機で洗えるのだろうか。目覚めたばかり、半ば寝ぼけた状態で枕の洗濯表示マークを見てみる。よくわからないが、ネットで調べると、どうやら洗えるみたいだ。

 

“なんだあ、洗えるんだあ🤪”

 

この時を振り返り今はこう思う。

寝起きと同時に枕を洗濯機に放り投げスタートボタンを押す。はたせるかな、一抹の不安はおおよそ10分後に姿を見せる。あの時、まずは顔を洗い、歯を磨き、朝ごはんを食べ、考えるべきだったんだ。枕は洗濯機で洗えるのか、とーー

 

<すすぎ>の段階で、異変に気がついた。それは洗濯機から出る音として聞いたことのない音。ーーまるで去年の夏の終わり、親友と行く当ての無いドライブの末にたどり着いた、飲み込まれそうで真っ黒な九十九里浜の波が打ち出す轟音、それと似ていた。あの時僕ら二人は、波はこんなに黒いのか、と季節外れで荒れた波を眺め、“飲み込まれそうだ”と呟いたら、肌に纏わりつく潮風に背中を押されるが如く、10分足らずで立ち去ったーー木箱に小豆を入れて動かしたら、波の音がする。それは簡単なギミックだが、フォーリー・アーティストという存在の認知として一役買った。まるで関係性の無い物同士が、アイディア次第で同じような音を鳴らす。耳の職人、卓越した類推能力が成せる技だ。それが、我が家の洗濯機の中で起きているという事実だ。洗濯機の蓋を開ければ、枕の袋は破れ、透明なビーズが雪化粧のように洗濯槽に溢れていた。自分の愚かさに憤慨する余裕もない、針の筵のような気分だ。

 

もうだめだと思ったね、取り除けても、どこか内部のほうへ入ってしまっている分は、どうしようもない。詰まってオシャカさ、不運(ハードラック)と踊(ダンス)っちまったんだよ、と言い聞かせる他なかったよ。自分の行いを恨んでも、保障するのは自分さ、運のせいにしてごまかしたんだーー

 

「洗濯機 枕」と検索ボックスに打ち込むと、まず予備候補に出てくるのは「破裂」「故障」。検索ワードの候補は、検索件数が多いほど上位表示されるはずだし、即ち「方法」「やり方」は調べずに失敗しているようだ。同じ愚か者が世の中に多く存在する。過信による過失で、「やってしまった」と気づいた頃にベストアンサーに縋り付くようだ。論ずる余地もなく、自分も同じ括りである。

Webに覚え書きされた愚か者たちの経験談は実に虚しい。買い換える以外に無いから、至極当然、覚え書きは力の無いボヤキ程度でしかない。

今回、天に召された洗濯機は、4年弱前に購入した。洗濯機の寿命は平均8年と言われている。2018現在、人間の平均寿命は約80歳であることから、例えれば、40歳程度で亡くなった、ということになる。働き盛りで、若すぎる死。

業者に頼んで、洗濯機ごと分解し修理することもできるようだが、3万円程度かかるらしい。そもそも3万円程度の洗濯機だ。治ったとして本当に8年も生きるのか怪しいところ。多額な延命処置を業者にお願いすることは、できなかった。理屈だけで洗いきれない選択は、早々に新しい洗濯機が居座る輝かしい光景にすすがれ、心の排水溝へと脱水されていく。

 

それから2時間後。私は今、家電量販店にいる。洗濯機売り場の近くにある丸いテーブルで、担当のお姉さんと話している。配送の日程や、配送料、運び入れるマンションの動線などの確認だ。

 

「古い洗濯機はどうされますか?」

 

一瞬、その姿が頭に浮かび、その刹那、“古い洗濯機”が新しい洗濯機として運び込まれた4年前のあの日を思い出した。この4年間は自分の人生設計としてもあらゆる選択を迫られた期間だった。毎晩、暗い顔で帰る顔を見上げていたのは、家に入ってすぐの場所に置いてある貴方だった。ほんの数週間前、重要な決断をした私を見届けるかのように潔く去る貴方に、そして新しい洗濯機に

かんぱぁぁーい😜🍻